プロローグ プレジール
 
 神奈川県横浜市の「プロローグ プレジール」は、パンや洋菓子、パスタ、ピッツァなどを提供するベーカリーレストラン。山本敬三オーナーシェフは、「窯は、店の味を最終的に決めるもの」といい、櫛澤電機製作所の「溶岩窯」と一心同体で、同店を繁盛店に育て上げた。
 
パン、洋菓子、ピッツァのすべてが本格的
レストランフロアは、開放感のある明るい色調。オープンキッチンの中に「溶岩ピッツァ窯」が見える


ナポリタイプのピッツァは、「溶岩ピッツァ窯」で焼き上げる
 「プロローグ プレジール」は、丸く突き出たように見える屋根が特徴的だ。その突き出た部分は実は、ステンドグラスでできた明りとりとなっている。店内に入って天井を見上げると、ステンドグラスを通って、カラフルな色になった陽の光が輝いている。
 入り口前には、木製のデッキが広がっている。デッキには、パラソルを備え付けたテーブルと、椅子が用意されており、店内で購入したパンなどを食べることができる。晴天時は特に、気分良く利用できそうだ。
 60坪の広さがある店内は、その半分のスペースがパン売り場、もう半分がレストランフロアになっており、入り口に近い方がパン売り場、奥がレストランフロアとなっている。レストランフロアには、洋生菓子が並ぶショーケースが設置されている。洋生菓子は、「プレジールショートケーキ」(税抜300円)や「プレジールプリン」(税抜180円)など約20種類で、専門店に引けを取らない品質のものが並ぶ。
 厨房は、パン売り場とレストランフロアにそれぞれ設けてある。そしてそれぞれに、櫛澤電機製作所の窯が1台ずつ設置されている。
 パンと洋菓子を作るための「溶岩窯」と、ピッツァを焼くための「溶岩ピッツァ窯」だ。
 「溶岩ピッツァ窯」は、直径1・2メートルほどもあるドーム型。レストランフロアで、見た目からもかなりの存在感を放っている。設置場所は、レストランフロアの入り口と対角線上の角で、レストラン利用客の視界にまっ先に入ってくる。客は入店早々、料理への期待感が一層高まるに違いない。。
 
溶岩ピッツァ窯で焼き上げるランチ
約150種類のパンと焼き菓子が並ぶパン売り場

スタッフと共に、山本敬三オーナーシェフ(後列右)と、浅野景圭店長(後列左)
 山本敬三オーナーシェフは、同店のほか、横浜市内にベーカリー「パンステージ プロローグ」、東京・町田市にベーカリー「パンステージ エピソード」と、ピッツァやパスタを提供する「エピソード カフェ」を展開している。
 「プロローグ プレジール」は、4店の中で最も新しく、2012年にオープン。立地は、最寄駅から3キロほど離れており、周囲にはほかに商店などは見当たらない住宅地であるにも関わらず、次々に客が訪れる。
 レストランフロアでは、午前11時から午後3時までのランチタイムにお得なランチメニューを用意している。ランチメニューは、パスタ、または「溶岩ピッツァ窯」で焼いたピッツァと、サラダ、ドリンクのセット(税抜1000円)と、同じく「溶岩ピッツァ窯」で焼いた「ナン」がつく「自家製本格カレープレート」(税抜1200円)だ。ランチタイムは常に席が空くのを待つ人の列が絶えないほどの盛況ぶりだ。
 パンは、約150種類ほど揃えている。パン売り場では、「パウンドケーキ(フルーツ)」(税抜220円)などの焼き菓子も豊富に並ぶ。 これらのパンや焼き菓子はもちろん、「プレジールショートケーキ」や「プレジールプリン」などの洋生菓子もすべて、「溶岩窯」で焼き上げたものだ。
 
 
富士山の溶岩石が、生地の中心まで一気に火を通す
「溶岩窯」の活用効果について山本敬三オーナーシェフに聞く
―――「溶岩窯」を導入した目的は?
山本 おいしいパンを作るためには、技術を磨くことだけでなく、いい道具を選ぶことも重要です。
 道具のなかで最も大事なのが、窯です。開業するに当たっては、店のコンセプトと予算が軸になっていくと思います。窯は、店の味を最終的に決めるもので、道具の中で、最も高価なものです。店づくりにおいて窯は、そういった重要な位置にありますから、道具の中で、まっ先に決めるべきものだと思っています。
 櫛澤電機製作所の「溶岩窯」は、15年前にオープンした本店の「パンステージ プロローグ」に導入して以後、ほかのすべての店舗に導入しています。私は、パン職人歴30年ですが、その半分の期間、「溶岩窯」を愛用していることになります。
 そして、櫛澤電機製作所の澤畠光弘社長とは、「溶岩窯」を導入するよりも前から、お付き合いさせていただいています。機械のことだけではなく、例えば、海外の後進国や障害のある方に向けて、技術指導をする機会もつくって頂きました。
 パン職人としての視野が広くなったのも、澤畠社長のおかげだと思っています。
 「溶岩窯」は実は、開業する際に、澤畠社長に私から提案して作っていただいたんです。15年かけて必死に修行し、貯めた全財産をつぎ込むのですから、最重要アイテムである窯に妥協はできません。
 当時、溶岩石使用の窯はありましたが、それらは溶岩石が炉床にしか使用されていませんでした。それで、「炉床だけでなく側面や天井など、炉内のすべての面に溶岩石を使用して欲しい」と申し出たんです。
 私の店のコンセプトは、「立地が良くなくても、わざわざ買いに行きたくなるベーカリー」です。子どもにもお年寄りにも、また、パンの本場ヨーロッパに住んだ経験のある人にも、気に入るパンがあるように、たくさんの種類を揃えようと努めていて、本店では約250種類のパンを焼いています。様々なタイプのパンがありますが、そのすべてを、おいしく焼くことができるのは、「溶岩窯」だからこそだと思っています。また、「富士山の溶岩石を使った窯のあるベーカリー」というのは、それだけでも、魅力のひとつになると思っています。
―――「溶岩窯」が作り出すおいしさとは?

パンと洋菓子を焼き上げる「溶岩窯」
山本 「溶岩窯」と「溶岩ピッツァ窯」は、どちらもその名の通り、天然の溶岩石を使用したつくりになっていますので、溶岩石の遠赤外線効果で、一気に短時間で生地の中心まで熱を通すことができます。そのため、生地中の水分の蒸発を、最小限に防ぐことができ、パンはふっくら、洋生菓子に使うスポンジなどはしっとりふわふわ、ピッツァはもちもちに仕上がります。当店にとってまさに万能窯と言えます。遠赤外線は肉も、周りはカリッと、中はジューシーにおいしく焼きますからね。
 講習会や専門学校などで講師としてパンを焼くことがあり、いろいろな窯を使い比べて実感しますが、やはり「溶岩窯」で焼いたパンは、一味違います。まず食感が違います。特にハード系はパリッと仕上がりますし、しっとりさせたい部分は、よりしっとり仕上げることができます。
 パンは主食ですから、特別に変わったものである必要はなく、「やっぱりこの店のパン、ちょっと違うな」と感じてもらえるような、安定したおいしさを守っていくことが大事だと思っています。そういう意味で、他店との差別化を図るためには、定番中の定番のアイテムで、お客様においしいと言ってもらえるように努力したいと思っています。
 例えば、「溶岩窯」で焼き上げた「食パン」(税抜260円)は、しっとりふわふわで、他店との違いをきっと感じていただけると思っています。定番商品はどこの店にもあるものですので、少しの違いも際立ちます。お客様にとって、比較がしやすいので、自店の味を伝えやすいと思っています。
―――「溶岩窯」の満足度は?
山本 すべての店舗に導入していて、それぞれでフル活用できており、満足しています。
 「プロローグ プレジール」では、朝2時からパンを焼き始めます。3段のうち上段と中段は180~230度Cに設定してパンを焼いていますが、下段では150~180度Cに設定して洋菓子作りに利用しています。また、蓄熱性が高いので、余熱を利用してラスクも作れますので、朝から夜まで、無駄なくフル活用できますね。
溶岩窯

「また食べたいパン」があるパン屋さんを目指し、遠赤外線が多く発生する溶岩石使用の石窯で、本格的なハード系やヴィエノワズリーを焼いてみませんか?