ラ タヴォラ ディ オーヴェルニュ
 
 今年2月にオープンした「ラ タヴォラ ディ オーヴェルニュ」は、南イタリアの建物をイメージしたという外装が印象的なベーカリー。毎日、200種類ものパンを、客に種類ごとに予め告知した焼き上がり時間に焼き上げ、店頭に並べる。その驚異的な工程管理のベースには「テーブル型一次醗酵室」があった。
 
清潔感溢れる売り場と厨房
外観と同じ色調に統一された明るい雰囲気の店内。入って右側にある売り場はゆったりとした空間だ


カフェスペースから見える厨房の様子
 東京・葛飾区の「ラ タヴォラ ディ オーヴェルニュ」は、2014年2月にオープンしたベーカリーカフェだ。
 外観は、黄色と赤の外壁に、白い窓枠が際立ち、まるで南イタリアに旅行に来たかのような錯覚に陥ってしまうような雰囲気を放っている。
 店内も、外観と同じ色調で統一され、明るい空間となっている。入って右側に、ベビーカーや車椅子でもそのまま入れるように、通路を広くとった売り場があり、左側から奥へとカフェスペースが設けられている。
 カフェスペースの横には、ピッツァ専用窯が設置されている。南イタリアをコンセプトにした同店では、その専用窯で焼き上げた「マルゲリータ」(税込500円)などのピッツァを提供している。ピッツァは、注文を受けてから、生地の成形とトッピングをして専用窯で焼き上げる熱々だ。
 カフェスペースでは、ピッツァやドリンクのほか、売り場で購入したパンも自由に食べることができる。テーブル席のほか、カウンター席も設け、1人で来ても気軽に利用できるよう配慮されている。
 そして、売り場からもカフェスペースからも、風景のひとつとして目を楽しませてくれるのは厨房の様子だ。壁や扉など、機械以外のものはクリーム色や白色で統一されていて、清潔感が漂う。中にいるスタッフも、白いコックコート、エプロン、コック帽を、しっかりと身に着けた衛生的な姿だ。そんなスタッフらが、真剣にパン作りに精を出している様子を見ることができる。
 
出店に不可欠だったテーブル型一次発酵室
来店客を毎月楽しませる新商品の数々

テーブル席とカウンター席のあるカフェスペース
 
 このようなこだわりの空間に並ぶパンは、200種類にも及ぶ。ハード系、菓子パン系、焼き込み調理パン、サンドイッチ、そして「パネトーネ」(税込475円)や「カンノンチーニ」(税込195円)などのイタリアの伝統的なパンや菓子までバラエティー豊富に揃っている。
 中央の陳列台に並ぶのは、毎月スタッフ1人ひとりが考える6~7品の新商品で、常連客をわくわくさせている。このほか、2014年の「カリフォルニアレーズンベーカリー新商品開発コンテスト」の受賞商品「リーブルレザン」(税込248円)など、コンクールで受賞したパンも並ぶ。
 同店は、同し葛飾区内の人気ベーカリー「ブーランジェリーオーヴェルニュ」の2号店だ。
 両店のオーナーシェフの井上克哉さんは、パン職人として、国内のベーカリーのコンテストで多数の受賞歴を持ち、パンの国際コンテストへの出場経験もあるほか、講習会の講師や専門学校の講師なども務めるなど、ベーカリー業界になくてはならない存在になっている。
 そうした様々な場で活躍している井上さんが、1号店開業から10年以上を経て、2店舗目としてオープンしたのが同店。
 
 
発酵工程の温度と湿度管理が一番の決め手
「テーブル型一次発酵室」の活用効果について
井上克哉オーナーシェフに聞く
――テーブル型一次発酵室を導入した目的は?
井上 一次発酵は、風味、ボリューム、味など、パンのおいしさを形成するすべてに影響します。そもそもパンは発酵食品です。そのおいしさをつくり出すためには、発酵過程における温度と湿度が一番の決め手となりますからね。
 「テーブル型一次発酵室」は、その重要な温度と湿度の両方を、正確に管理してくれます。当店では温度28度C、湿度80%の設定で活用しています。毎日違う外気の温度や湿度の影響を受けずに、生地の管理ができるので助かります。導入することに迷いはありませんでした。
――テーブル型一次発酵室をパン作りの工程の中でどのように活用していますか?

「テーブル型一次発酵室」は、1室に5つの番重が入るようになっている


上の面は作業台として使えるので、発酵から成形の工程がスムーズ
井上 作っているパンのほとんどに、「テーブル型一次発酵室」は大きく関わっています。
 「テーブル型一次発酵室」で生地を管理することによって、パンの風味や味、ボリュームがよくなるだけではなく、工程がスムーズになります。時間通りに一次発酵が進むので、予定した通りの時間に、次の成形の工程に移ることができるからです。また、発酵にかかる時間も、30分程度短くなりますね。
 時間の管理ができるのは重要です。当店では、焼き上がり時刻をお客様にお知らせしています。朝7時にクロワッサンや食パン、8時に調理パンなどと、アイテムごとに焼き上がる時間が決まっているんです。発酵にかかる時間が日によって違ったりしたら、1つのアイテムの焼き上がる時間が前後するだけでなく、1日を通した工程のタイムスケジュールに影響します。品目は200ほどありますから、時間通りに作業が進まなければ、作りきることができません。焼き上がりを楽しみにご来店下さるお客様に、ご迷惑はかけたくないですからね。
 「テーブル型一次発酵室」は、一次発酵のほかに、菓子パンやハード系などの冷蔵発酵させておいた生地の復温にも使っています。また、夜間も使っています。サワー種など3種類の種を管理するためです。
 このように、発酵室としてだけでなく、復温室としても、種を管理する場所としても活用しています。
――テーブル型一次発酵室を設置した厨房での作業効率とその満足度はいかがですか?
井上 「テーブル型一次発酵室」は3枚扉で、3室あり、各室が5段になっていて、1室に番重が5つ入るようになっています。天板の部分は、作業台になっているので、一時発酵後、すぐに成形の工程に移ることができます。
 その動線がスムーズなのもいいですね。「テーブル型一次発酵室」がなかったら、生地の入った番重は、厨房の空いたスペースに積み上げておくことになるのですが、そうすると、重い番重を上げ下げしなくてはなりません。女性スタッフもいますので、しゃがんで取り出せるのは、助かりますね。作業スペースも、番重によって狭くなったりすることなく確保できます。
 また、「テーブル型一次発酵室」に入れずに、積み上げておいた場合、虫やゴミが付着してしまう可能性もあり、異物混入の危険性もあります。
 扉にはガラス窓が付いています。扉を閉めている状態でも、中の生地の様子が確認できるので、無駄な開け閉めをしなくて済みます。また、各室に、ヒーターと加湿器が付いているので、入れる場所によってのムラがありません。
 発酵室としての役割が主ですが、当店のパン作りのすべての工程で役立っているという実感があります。 そして何より助かっているのは、導入後のメンテナンスの手厚さです。困ったことがあったときには、土日祝日問わず、プロサージュさんが駆けつけてくれます。「テーブル型一次発酵室」以外の機械まで、面倒を見ていただいています。

パンの風味は一次発酵で決まります。この工程で大切なのは、正確な温度と湿度の管理です。弊社の製品は、安定した温度と湿度を保つことができ、扉を開けずに、ガラス窓から生地状態を確認できます。また、一次発酵室の上を作業台として使用できます。